用語解説

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アンペア・ターン(AT)

起磁力の単位。磁力を発生させる大きさで、コイルに流れる電流(アンペア)とコイルの巻数(ターン)の積をいいます。

アンペア・ターン(AT) = コイル電流(A) ×  コイル巻数(T)

ソレノイドの機械的出力はアンペア・ターンに比例しますので、アンペア・ターンが大きい程出力は大きくなります。
ただし、コイル温度上昇や磁気飽和の関係で、作動周期10% を超えるアンペア・ターンでの使用は一般的ではありません。

AWG

AMERICAN WIRE GUAGEの略称で、アメリカで制定された電線の規格です。
導体の直径寸法等が定められています。
コイルワイヤーサイズの指定に用いられ、数値が小さいほど太く、大きいほど細くなります。

絶縁種別、絶縁階級

ソレノイドのコイルの耐熱温度を絶縁階級で表し、各絶縁階級で最高許容温度が決められています。

絶縁種別 最高許容温度
Y種 90℃
A種 105℃
E種 120℃
B種 130℃
F種 155℃
H種 180℃
電力(ワット)

電力とは、電気エネルギーの消費量を表します。
ワット(W)という単位で大きさを表します。
電力は電圧(V)と電流(A)の積で決まり、次の式で算出します。

電力(W) = 電圧(V) × 電流(A)

安全率

ソレノイドは通電時にコイルの発熱によって、抵抗値が上昇し、流れる電流は低下します。
電流低下により、アンペアターンが減少し、ソレノイドの出力は低下します。
あらかじめこの出力低下を見込んで、負荷を駆動するのに必要な出力を確保するための値です。
負荷にこの値を乗じた出力を有するソレノイドを選択します。

  • ロータリソレノイド、プッシュ・プルソレノイド等 1.5倍
  • オープンフレームソレノイド、自己保持ソレノイド 1.3倍
作動周期、デューティ

ソレノイドの機械的出力は、コイルの励磁電流に比例しますが、コイルの温度上昇や磁気飽和により限界があります。作動周期が小さければ温度上昇も少なく、大きな励磁電流を流すことができるので大きな出力が得られます。

作動周期は下式で表されます。

標準外作動周期と電圧の求め方

コイルデータにない作動周期でご使用になる場合の電圧は、下式で求めることができます。

E1:作動周期100%の時の電圧 (VDc)
E2:作動周期α2の時に通電可能な最大電圧 (VDc)
α2:使用したい作動周期(%)

作動周期とアンペア・ターン

作動周期とアンペア・ターンとの関係は次のようになっています。

作動周期 100% 50% 25% 10%
アンペア・ターン 1 √2 2 √10
電圧 1 √2 2 √10
電力 1 2 4 10
最大ON時間

ソレノイドは、連続定格で使用したときコイルの発熱と周囲に発散する熱とが等しくなって飽和します。
連続定格以上の電力で使用すると、コイルの飽和温度がそれを構成するコイルワイヤなどの絶縁物の耐熱温度を超え、焼損することがあります。
これを避けるため、カタログに定められた短時間定格には時間制限を設けています。
コイルが焼損せずに継続使用可能な時間が最大ON時間です。

安全率の考慮

ソレノイドのコイルは通電により発熱し、抵抗値上昇により電流が低下し、出力が減少します。
温度上昇後の電流においても必要な出力を得るために安全率を考慮してコイル定格を決定します。
この値は使用条件によって大きく異なりますので、目安と考えてください。
コイルの温度上昇は、駆動電圧と通電率、ソレノイドの放熱条件によって決まります。
カタログに記載された使用条件の場合に1.5または1.3を使用しますが、通電率が高ければ温度上昇は大きめになりますので、安全率は大きくとります。
電源電圧の変動が大きい場合には電圧が高いときをカタログの電圧と比較して判断します。
コイルの放熱条件が標準放熱板と比較して同等なな放熱が望めない場合には安全率を大きくする必要があります。

コイルの放熱

プッシュプルソレノイド、ロータリーソレノイドのコイルデータは、周囲温度20℃で標準放熱板が付いた場合の通電条件を示しています。(小型プッシュプルソレノイド・チューブラソレノイド・オープンフレームソレノイド・自己保持型ソレノイドは標準放熱板に取り付けない場合のコイルデータになっています。)
一般的には取付板を放熱板として使用します。この取付板の放熱能力は、材質や周囲環境により変化しますので、標準放熱板使用時と条件が異なることになります。
最終的には実機にて発熱量をご確認して頂く必要があります。
標準放熱板が付かない場合は、おおよその目安として、コイルデータ内の電圧の50%以下に制限することが必要です。詳しくは実験でご確認下さい。

温度とコイル抵抗の変化

このカタログに記載のコイルデータや特性データは、全て周囲温度20℃を基準としています。
コイルに電圧が印加されるとコイル温度が上昇します。
これによりコイル抵抗が増加しアンペア・ターンは減少します。
コイル温度とコイル抵抗及びアンペア・ターンとの関係は下表の通りです。

コイル温度 抵抗係数 アンペア・ターン比
-40 0.764 1.309
-20 0.843 1.186
0 0.921 1.086
20 1 1
40 1.079 0.927
60 1.157 0.864
80 1.236 0.809
100 1.314 0.761
120 1.393 0.718

この表のアンペア・ターン比を用いて温度変化後の出力を求めることもできます。
各製品の”選定の仕方”の項をご参照下さい。
なお、ソレノイドのコイル温度上昇を知りたい場合は、実際の使用状態で温度上昇前後のコイル抵抗と周囲温度を測定し、次の計算式で求めることができます。

t: 温度上昇(℃) t1: 初期の周囲温度(℃) t2: 最終の周囲温度(℃) R1: 初期のコイル抵抗(Ω) R2: 最終のコイル抵抗(Ω)

標準放熱板

ソレノイドのコイルは通電により発熱します。
この熱は本体に取り付けられた放熱板を経由して放熱します。
弊社では各ソレノイドに対して放熱板の面 積を定め、これを標準放熱板と定義しています。
カタログには標準放熱板を使用したときの電圧・出力を掲載しています。
一般的には取付板を放熱板として使用することが多いと思います。
この取付板の放熱能力は、材質や周囲環境により変化し、標準放熱板使用時と条件が異なることが多いので、定格表と条件が異なることになります。
このため、最終的には実機にて発熱量を確認する必要があります。

応答時間

ソレノイドの応答時間は、電圧を印加してから所定のストロークに達するまでの時間をいいます。
このカタログに記載のデータは全てコイル温度20℃、無負荷のときの参考値を示しています。
応答時間は、コイルに流れる電流をオシロスコープ等で観測することによって知ることができます。
電流は図1に示されるようにコイルのインダクタンスの影響で徐々に上昇します。
a点に達してアーマチュアまたはプランジャが動作を開始すると、磁極間のスキマが減少することでインダクタンスが変化します。
このときに発生する逆起電力で電流の上昇率が変化します。変化量はソレノイドの大きさや取り付けられた負荷によって異なります。
b点で作動は終了し、インダクタンスの変化が無くなるために電流は再び上昇し

電流 =電圧/コイル抵抗   I=E/R

の値に定まります。
図1の0からb点迄が応答時間になります。
なお、負荷をつけた場合は、応答時間が長くなりますので実機でご確認下さい。

0:通電開始 a:動作開始 b:動作終了 0~b:動作時間
逆起電圧

ソレノイドはそのコイルが大きなインダクタンスを有するため、通電に際していくつかの注意が必要です。
電流の遮断時には、通電電源の極性と逆方向に大きな電圧を生じます。
この現象は逆起電圧、又は逆起電力といいます。
これに対策を施さないと駆動用の接点に火花を生じて焼き付いたり、駆動用のトランジスタの耐圧破壊を引き起こします。

接点保護

ソレノイドは高いインダクタンスを持った誘導負荷であるため、電流を遮断する際に制御用の接点に火花放電を生じ、接点が焼損することがありますので、適切な接点保護を行って下さい。
抵抗値、コンデンサの値はお客様の回路で確認の上定数をお決め下さい。

フライホイルダイオード、フリーホイルダイオード

ソレノイドは、通電後にその電流を遮断する際に逆起電圧を生じます。
このための対策として最も効果的で確実な方法がコイルに並列にダイオードを挿入する方法で、これをフライホイルダイオードと言います。
保護効果は確実に機能しますが、電流の垂下が遅くなるために復帰時間に遅延を生じることがあります。
この対策にはバリスタやツェナーダイオードを用いる方法があります。
「めかとろ通信38号」参照

保持回路

大きな出力が必要でありながらスペースに制約がある場合に、動作時のみに高い電圧を印加して起動し、その後コイルの発熱をおさえるため印加電圧を下げて使用する回路です。
ソレノイドが動作した後、コイルに直列抵抗を挿入し分圧させる方法や、ON時間をチョッピングし平均電圧を下げる方法等があります。
また、ダブルコイル型と言う動作用と保持用の2つのコイルを持つものもあります。
これは、動作時に両コイルを通電し、保持時は保持コイルのみの通電で使用するものです。

残留磁気、残留吸着力

ソレノイドは磁極の構成部品に鉄系の磁性体を使用しています。
磁性体の磁気的材質によってはソレノイドの通電を遮断した後に、多少の磁束が残留することがあり、これを「残留磁気」といいます。
この残留磁気により生じる吸着力で復帰不良の原因となることがあります。
新電元ソレノイドは吸着時にエアギャップを設けることで残留磁気による影響を軽減するように設計されています。

磁気漏洩(磁気ショート)

ソレノイドは固定磁極と可動磁極の間に磁束を供給して両者間の吸着力を推力として利用します。
外部に可動磁極が露出している型式において、ソレノイドを磁性体である鉄系の基部に設置したとき、ここに取り付けられたストローク設定用のストッパで可動磁極の作動範囲を決めるような場合、このストッパが磁性体である場合には、外部にこのストッパを経由する磁束の通過経路が形成されます。
本来可動磁極から固定磁極に向かう磁束が外部に漏出することで吸引力が低下、作動不良に陥ることがあります。
ストッパに非磁性体を用いるか、シャフトなどの非磁性体部で設定するようにすることが必要です。

オーバドライブ

インパクトハンマでは、ソレノイドの能力を生かすには駆動方法が重要です。
起動時に通常よりも大きな電圧で駆動し、初期加速力を与えます。
起動後は発熱の低減のため電圧を抑えます。
コンデンサ放電回路や、起動後にPWMで平均電圧制御を行う方法があります。
「めかとろ通信 第24号」をご参照ください。

整流用ダイオード

ソレノイドの駆動源が交流の場合は直流に変換する整流体が必要になりますが、整流方式は全波整流を基本として設計して下さい。
また、整流体をお選びになるときはソレノイドの駆動電圧の3倍以上の尖頭逆電圧のものをご使用下さい。
新電元では、ソレノイド駆動用のシリコン整流体も用意してありますので、下記の表中からご指定下さい。

ソレノイド電流 交流入力電圧
IDC VAC
[V/R] (A) 200V以下
1 D2SBA60
1 ~ 2 D3SBA60
2 ~ 3.5 D5SBA60
3.5 ~ 8 D10XB60

※フィン付き(詳細は新電元半導体カタログをご参照下さい。)

コイルの電食

高温高湿の雰囲気でケースをアース接続して使用する場合、接続の方法によっては電食によりコイルが断線することがありますので次の点にご注意ください。

【1】 電源の(+)側をアースして下さい。

【2】 電源が(-)接地の場合には、電源の(+)側にスイッチを配置し、コイルは(-)側に接続して下さい。

【3】 電源の(-)側をアースし、 かつ(-)側にスイッチを入れることは避けて下さい。

軸方向運動(アキシャルストローク)

当社の標準ロータリソレノイドはへリカル型と呼ばれています。
ヘリカル型のロータリソレノイドは、回転時に若干の軸方向の移動を生じます。
ソレノイド内部で発生した吸着力をこの動きによって回転運動に変換しています。
このため、負荷の取付によってこの動きを阻害しないようにすることが必要です。

突入電流

ACソレノイドは起動の際に一時的に定常時の電流値を大きく上回る電流が流れます。
ACソレノイドは交流で駆動され、コイルに流れる電流値はコイルの交流に対するインピーダンスで決まります。
インピーダンスは磁気ギャップに大きく依存し、作動初期のギャップの大きな位置では極めて小さく、作動終了位置で大きくなります。
このため、作動開始点で大きな電流が流れ、作動後には電流が低下して定常電流となります。
この一時的な電流を「突入電流」といいます。
DCソレノイドは電流を決めるのは抵抗値と駆動電圧であり、磁気ギャップに依存しないため、突入電流は生じません。
白熱電球やDCモータも突入電流を生じます。
「めかとろ通信 第20号」参照

オームの法則と電力

(参考)

I:電流 (A) R:抵抗 (Ω) E:電圧 (V) P:電力 (W)
単位の換算について

(参考)
1N(ニュートン) = 0.102 (kgf) = 102 (gf)
1Kgf = 9.807 (N)
1N・m =10.197 (Kgf.cm)
1MPa =10.197 (kgf/ cm2)
1Kgf/cm2 = 0.098 (MPa)

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